From Ichihara Chiba

古着の その後

沙友里さん

"服を売らない"アパレルブランドenergy closet代表の三和沙友里さん。移住して2年が経った今何を感じ、どのような暮らしをしているのか。そして自ら起業して活躍している沙友里さんから見て、市原はどのようにうつるのか。過去に月刊開宅で紹介した移住者のその後を取材する特別編、月刊開宅"その後"。三和沙友里さん、その後どう?

「その後、感じていること」

開宅舎 岡本(以下Oと示す):市原に実際に住んでみて二年経ちましたけど、その後どうですか?

沙友里さん(以下Sと示す):大変なこともありますけど、楽しく過ごせてます! 実家も普通のきれいな住宅街で、そこで育って、山で過ごすみたいなこと全然なかったので、こっちで暮らすようになって、たくさんのことを知りました。虫が出たり、天気がすぐ変わったり、え、霧ってこんな真っ白になるんだってびっくりしたり。(笑) 車もこっちにくるタイミングで買ったんですけど、運転も慣れていなかったので、バッテリーって上がっちゃうんだとか、ぬかるんでるとこに入るとハマっちゃうんだとか、子どもが大人になったみたいな感じです。

O:やっぱり大変さもありましたか?

S:東京での暮らしではなかった大変さみたいなのはありました。でも、そうやって困ってると、近所の人がみんなどうした!どうした!って助けてくれるんですよ。だから、すごい安心感はありますね。他にも朝起きたら玄関に野菜を置いてくれていたりして、困ったら何でも言っていいんだからね!って。本当に優しくて、この地域、集落がみんなファミリーみたいな感じなんです。

O:みんなの娘みたい。(笑)
移住される前の印象ってどうでしたか?


S:移住する前は、東京で事務所を構えてやっていたんですけど、コロナ禍になって東京にいても外出られないし、仕事の規模も拡大してきて、東京の事務所が手狭になったというのもあって。市原の友人に連絡したら、「それなら良い人いるよ」って、紹介してくれたのが開宅舎さんで、周りから「さゆりちゃんなら山住めるんじゃない」って言われて、住むことになったんです。(笑)
だから、そもそも田舎暮らしを想像して移住してきたわけではなかったんです。とりあえず、広いアトリエ欲しいっていうので来て、実際住み始めてみて田舎なんだなって実感してきた感じですね。だから最初はほんとにワクワクって感じでした。(笑)
あとは、大学生の頃、理工学部にいて、まちづくりについて学んでいたんです。その時、研究対象地として市原に触れる機会があって、オープンロードの小川さんとか市原で楽しそうにしている大人の人たちがたくさんいて、なんか市原市って面白い街だなって気になっていました。

「起業のその後」

O:元々ブライダル会社で働かれていたことがあるんですよね。そこからなぜ起業することになったのか改めて教えてほしいです。

S:元々ものが上手に使われていないことに違和感があって、ものが上手に巡っていくということに興味を持っていたんです。それでたまたま働くことになったブライダル会社では、式が終わった現場に行って廃棄されてしまう予定のお花を回収して、ドライフラワーにして販売経路を作ったりしていました。そういうふうに、ものを上手に循環していく仕組みを考えるのが好きだなって思っていたんですよね。

O:そうだったんですね。ものが上手に巡らない違和感みたいのが起業するきっかけになっていたんですね。

S:それこそフードとかフラワーとかは、社会的にもロスに対して問題定義されていたので興味がありました。でも、自分が実際人生の大半である仕事として何を扱うか考えた時、ずっと好きだった「服」が大切にできて循環していくような仕事をしようと決めました。

O:起業することに迷いはなかったんですか?

S:迷いは全然なかったですね。でも、ビジネスモデルとして自分が生活出来る程度にはやっていけるなっていう確信と、あとは自分が人生をかけてやれるっていう覚悟ができるくらいには、考えたり計画立てたりしました。

「その後、気づいたこと」

O:この地域に暮らしてみて2年経ちましたけど、気づきや発見みたいなのはありました?

S:この地域に住んでいる人たちの知識って、すごく尊いなと思いました。例えば、木ひとつ見ても、その木についてめっちゃ喋れるおじいちゃんがいて、この木はなんとかって木で、こういうふうに使えるとか、この時期になると匂いが変わるとか。そんな考えた事もなかったことをそういう山暮らしの先輩たちが教えてくれた。そこら辺にある木でも、綺麗な花が咲く時期を知っていて、「来週が見頃だから!絶対行き!」みたいな感じで、そういうのすごく楽しませてもらえてる。豊かだなって思います。

私、よく言ってるんですけど、市原にはすごいポテンシャルがあって、活かされてない人や物がめちゃめちゃ眠っていると思うんですよ。みんないいもの持ってるのに気づいてなくて、そういうものとかが活かされずに捨てられちゃってる。それに気づいて、アクションできるのは私みたいな外から来た人なんじゃないかなって思っています。

あと、土地柄的にも千葉県の真ん中で、湖もあるし、山もあるし、すごい豊かだなって思うんです。それにさっきも話したすっごい楽しそうな大人たちがわちゃわちゃやっていて、誰でもウェルカムだし、やりたいことがあったら一緒になって走り回ってくれる人たちもいて、町としてもすごく魅力だと思います。

O:確かに、それは僕もすごい分かる気がします。市原の人と話すと、本当に良い人が多いですよね。

「その後のその後」

O:沙友里さんはこの地域がもっとこうなったらいいなみたいなこと、何かあったりしますか?

S:やっぱりものがよくわかんない理由で廃棄されたり、使われなくなったりするのが嫌で、もっとみんなが気軽にものをトレードできる、そういうステーションみたいな機能があったらいいなって思いますね。
この家にある家具も空き家の掃除をした時にもらった物をきれいにして使ったりしています。元々古い物が好きだから、ピカピカなものよりも使い古された感じだったり、使った痕跡のようなものがある方が良いなって。
ちょうど今月まで近くでフリマの主催をやってたんですけど、そのフリマも1つの手段だと思ってて、誰でも出店していいし、別に値段つけてもつけなくてもいいじゃないですか。あげたっていいし、交換したっていい。じゃあ、これあげるからこれちょうだいって。みんながいらなくなったものをすぐに捨てるのではなく、もっと簡単にトレードできる環境や文化を作れたらいいなって思いますし、市原のみんなでなら、つくれるんじゃないかって思います。

沙友里さん

"服を売らない"アパレルブランドenergy closet代表の三和さん。

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ノックの学校

空き家問題や移住促進に取り組む各地の方へ
開宅のノウハウを伝える研修を開いています

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