♯空き家に光を

もち米の蒸し方も知らない僕たちにベテランのお叱りが入る。今日は朝生原にある空き家で建前が行われる。

朝9時、庭に釜を設置し、薪で火を起す。薪は近くの製材所でもらったものだ。前日から水につけておいたもち米を蒸籠に入れ、釜の上に置く。

しばらくして木蓋を開けると、蒸しあがったもち米のいい香りと、白い湯気が立ち上がり、中から艶のある真っ白なもち米が姿をあらわす。

蒸しあがったもち米を、熱いうちに臼に移すと、ここからははスピード勝負。熱々の柔らかいうちに杵を使って練っていく。米の粒が潰れて塊になってきたら、いよいよ杵を振りかぶって餅をつく。ぺったんぺったん、上手く搗けた時にはいい音がする。

なんどもなんども「ばかやろう」と言われながら、何とか形になっていく。「口は出すけど手は出さないぞ」そう言ってたけど結局最後まで付き合ってくれた地元のベテラン。つき手と返し手が声をかけ合いながら、餅をつく様子は熱気のある祭りのよう。少し前まで空き家だった場所に、餅をつく音と、大きな笑い声が響いた。

「餅つきやってたっぺ、いい音が聞こえたよ」

寺の集まりが終わった年寄りが集まってくる。残った餅を食べながら、新しい若者の挑戦をみんなで聞く。

「角屋で酒と塩を買ってこい」呑むのかなと思って聞き返すと、ばかやろう、いいから買ってこい。最後に四隅に塩を盛り、玄関の周りに酒をまき、稲荷様に餅を備えて、建前はお開きになった。

昔は、新しい家がたつ度に建前をやっていたそう。「今度建前やるよ」地域の年寄りに声をかけると皆懐かしがる。「エプロン広げて屋根から投げられる餅を受け取ったのよ」思い出話が盛り上がる。臼と杵は一家に一対はあり、めでたいことはみんなで祝う、そんな習慣があったそう。建前の会場となったこの家の納屋にも、杵がしまわれていた。

そういえばこの家の庭にはもちの木が植えられていもる。ご先祖さまが将来、杵を作るのに使うからと植えておいたものだそうだ。

この空き家を開宅するのは市原社中。彼らによってこの空き家がどう開宅されていくのでしょうか。開宅舎では今後も彼らの開宅を追っていきます。

*建前…新しく家を建てる際に、工事が棟上げ(むねあげ)まで終了したところで執り行う行事。建物の棟が無事上がったことへの感謝と、これからの工事の安全と完成を祈願するために行われるもの。この時は、空き家の開宅を祝して建前を行なった。新築ではないので棟上げはしないが、代わりに長い間しめ切っていた戸を開け、中に光と風を通した。

*ばかやろう…この地域の方がよく使う口癖。愛のある方言。