♯空き家に光を

ホースの水で寝癖を整える。

「ちょっと待ってろよ、こうやってよ、こっちの方がいいっぺ、ほら、いいぞ、かっこよくうつせよ」

朝7時半、今日は水稲の苗床を作る。

「ガアガアガアガア、うるせえなあ、おめえみてえなのがやったら、芽が怖がってでねっぺ。ガハハハ。」

大きな笑い声が響く。

みんな強面だけど、これでも毎年、真面目に米を作っている。しかも集落で唯一おだ掛けで米を作る。おだ掛けはコンバインを使わないため、藁が残る。それを神社の注連縄に使う。毎年集落のみんなで注連縄を作るらしい。

「タケンコ食ったか?」

強面だけど、筍は気になるみたいだ。

「こないだ天ぷらにしたの先っぽだけ食ったよ、あそこんが一番早え。」

どこのがうまい、あそこのが早い、そんな会話が最近はよく聞こえる。

「にしゃ、さきっぽ食っただけいいっぺよ、おらまだハツモン食ってねえ。」

この時期にはクロをぬった田んぼや、水が張られた田んぼを見かけるようになる。道をトラクターが走り始め、道の真ん中にはタイヤから落ちた泥をよく見かける。

「ウエダはいつやる?でもあれだっぺ、たんぼ、かんまして、くろぬんなきゃいけねっぺよ」

「まだだっぺよ、タネはどこで冷やしてる?くろかわのホリヌキて冷やせばいいっぺ。にっぷくろくらいまだだいじょぶだっぺ。」

機械がなかった昔は集落のみんなで田んぼをやった。端から順々にみんなで終わらせていった。その田んぼの家がおやつやお昼を用意した。それを土手で食べた。みんなで田植え歌を歌いながら行う田植えは楽しかった。

「ほら、見ろよ、こんなうまくできるようになっちゃったよ、こういうのはだいたい終わりくらいにコツが掴めるんだよ。」

「じゃあおめえ、その調子で今度ウエダんとこもやってやれ、がははは。」

120枚の苗床作りがもうすぐ終わりそうだ。

「いやあ、俺がいねえとこんなに早く終わんなかったっぺよ、なにご馳走してもらおっかな」

「おめえがいなかったら、もっと早く終わってたよ、ガハハハ」

お昼はお決まりの兼龍に行くそうだ。

「楽しくやんねえと百姓なんてやってらんねっぺ。」

強面が大きな声で笑っている。